2010年4月からEvernoteを使っています。
本記事では、Evernoteを10年以上使って得た知見を整理し、Evernoteを含めた今後のメモツールやノートツールの使い方について考えます。
1 Evernoteを使い始めた当時
本題に行く前に、少しだけ、Evernoteを使い始めた当時を振り返ります。
当時は、Evernoteのようにあらゆる書類を保存でき、しかもパソコンとスマホでデータが同期する、といったデジタルツールはなかったので、夢中になって使っていました。
Evernoteを使い始め10年以上が経ちました。
Evernoteの一強時代は終わりました。さまざまなノートアプリやメモアプリが乱立し、Evernote以外の選択肢もたくさんあります。
Evernoteのヘービーユーザーであった方でも、Evernoteに見切りをつけ、他のアプリに流れていく時代です。
Evernoteに対する風向きは、以前より、確実に悪くなってきているの否めません。
しかし、この10年以上、Evernoteを使い続けてきたからこそ、実感としてわかったノートアプリやメモアプリの使い方のキモみたいなものが自分の中にあります。10年以上使い続けたEvernoteから得た知見です。
これを整理します。
2 Evernoteから学んだこと
さすがに10年以上使っているので、Evernoteから得た知見はたくさんありますが、ここでは5つに絞って考えてみます。
(1)目的を持って使わないと物置状態になる
Evernoteはあらゆるファイル形式を保存できます。10年前はEvernoteと同等の機能を有するアプリはありませんでした。
だから、何でもEvernoteに突っ込んでいました。
データ類はとにかくEvernoteに保存。紙の情報もスキャンしてEvernoteに保存。ちょっとでも気になったWebページはEvernoteにクリップ。さらには、更新されたブログを自動的にEvernoteへ保存するなど、あらゆることを自動化してEvernoteに何でもかんでも保存していました。
すると、困ったことが起きます。
目的のノートが探しづらい。ノートの数が多くなれば当然です。Evernoteは検索機能が強力だといっても、何でもかんでも放り込んでいてはノイズが多くなって目的のノートに辿り着きづらくなります。
さらには、データ量が多くなり、動きがモッサリしてきます。
データ量に関係なく、もともとの動きの遅さもあるでしょうが、起動に時間がかかり過ぎ、すぐにメモするメモアプリとしては致命的です。
見返すときも同様です。動きの遅さにストレスを感じるようになり、結局、めったに見返さないメモを保存する物置状態になっていきました。
何の目的もなく何でもかんでもEvernoteに保存するのは、ノイズが多くなり目的のノートが探しづらくなる。ノートアプリやメモアプリを使う目的を明確にし、その目的にそったメモを保存するべきである。
もちろん、「自分に関する情報をすべて保存する」というのも1つの目的だが、動きのスピードが遅くなったりノイズが多くなることとのトレードオフだと認識しなければいけない。
(2)何でもかんでも放り込んでもそこから何か生まれることはほとんどない
メモは1箇所に保存する。
今でもそうですが、当時も、ノートアプリの使い方において、よく聞く運用方法でした。
それに則り、私は、自分に関するあらゆる情報をEvernoteに保存していました。
まさに「第2の脳」。
自分に関する情報はEvernoteを見ればすべてわかります。
とはいっても、前述のとおり、次第に物置状態になる始末。
さらに、メモを1箇所に保存する利点としては、異なる情報同士が結びついて新しいアイデアが生まれる、といった話をよく耳にしました。
でも、Evernoteからは何も生まれなかった。
“何も”、というのは少し言い過ぎかもしれませんが、Evernoteの動きが遅くなるのにあわせ、少なくとも、蓄積したメモを見返すことはほとんどなくなり、死像メモだらけになりました。
メモを一箇所に保存したからといって何かが生まれるか、といったら、必ずしもそうでないことがよくわかった。
蓄積したメモから何かを生み出すためには、それなりの仕掛けやメモの仕方、メモの保存方法などを考える必要がある。
(3)メモする仕組み以上にメモを見返す仕組みがないとメモは死蔵する
Evernoteユーザーが増えるにつれて、サードパーティ製のアプリの数もどんどん増えてきました。とりわけ、多かったのが、Evernoteへメモを手軽に素早く送信できる系のアプリです。
ただ、どれだけメモをする仕組みを整えても、メモした後にどうメモを活かすか。その仕組みがないと、メモしっぱなしで終わります。
かといって、Evernoteの動きの遅さでは、どうしても見返す意欲がそがれます。アプリ自体に見返しやくする仕組みもありません。
タグを駆使して、見返す仕組みを作ろうしましたが、どうしても動きが遅くては次第に見返すのがストレスになってきます。
とかくメモを素早くとる工夫はするが、メモを見返す工夫は疎かになりがち。でも、アイデアメモの類は見返さないと活かせない。死蔵してしまう。
メモを保存する目的が、アイデアの発想や何らかの意識醸成であれば、メモを定期的に見返す仕組みを構築する必要がある。
(4)定期的に保存する枠組みを見直さないと使えなくなる
情報が増えてくると、どのノートブックに保存してよいかわからなくなってくることがあります。また、複数のノートブックにも所属する情報も出てきます。いわゆるコウモリ問題です。
さらに、自分の興味・関心は変化していきますので、時間が経てば、既存のノートブックの枠組みではとらえきれなくなってくることもあります。
これらは、長いこと使っていれば、当然のことです。
その都度、ノートブックの構成を考え直し、ノートの入れ替えをすることになるのですが、これは結構大変な作業です。
かといって、最初から完璧なノートブックの構造を作ることは不可能です。
長期間にわたって使うノートアプリやメモアプリは、フォルダ(ツリー)形式の保存ではいつかは限界が来る。
フォルダ(ツリー)の構造を再構築するには、保存しているメモの量が多くなるほど、かなりの手間と労力がかかる。そこで、いわゆるネットワーク形式で保存できるメモツールの導入を検討した方がよい。
(5)アプリのスピードはメモをとることとメモを見返すことに思ったより影響がある
新しいiPhoneを購入したとき、Evernoteの動きは軽快なので、見返すことにストレスがなくなり利用の頻度が上がることがありました。
また、長く使っているiPadとiPad miniでEvernoteを使うとき、同期が遅過ぎて、使うのが苦痛になり、iPadとiPad miniでは、自ずとEvernoteを使わなくなりました。
アプリの起動スピードや動作の軽快さは、自分が思っている以上に無意識レベルで、メモをとったり、メモを見返したりする動作に影響を与えていると実感しました。
当然のことだが、メモアプリやノートアプリの起動の速さ、動きの軽快さは重要である。そうでないと気軽にメモを取ろうと思わないし、ましてや見返すこともしなくなる。それではメモした意味がない。
アプリの動きにストレスを感じているようではメモアプリ・ノートアプリとしては厳しい。
3 今後のEvernoteとメモツール
こうして改めてEvernoteから学んだことを整理し、それをもとに今後Evernoteをどのように使っていくか。自分の中の情報管理システムの中にメモツールをどう位置付けていくか。今現在の考えを整理します。
まず、メモツールについて。
着想メモや知識メモ、読書ノートは、長期的かつ常にアクティブに扱うメモのため、ネットワーク形式で保存でき、かつ、Evernoteより動きの速いObsidianとScrapboxを検討しようと思っています。
次に、Evernoteについて。
少し前から保管庫として使っていますので、それは継続しつつ、使う端末を限定しようと考えています。
今使っているiPhoneは最新機種なので、それなりのスピードで動いてくれますが、iPadとiPad miniでは、常時、Evernoteを使うわけではないということもあり、起動させても同期するだけで相当な時間がかかっています。使えるレベルではありません。
よって、一番使う頻度の高いiPhoneでの利用のみを前提に考えようかと思っています。Macは以前からWebで使っていたのでWebで使います。
となると、現在の有料プランを無料プランに変更したくなるのですが、ネックは、10年分保存してある日記です。移動させるのは大変なため、今後も日記は引き続きEvernoteで管理しますが、Taskuma(たすくま)から出力したデータをEvernoteに保存し、それをもとに日記を書いていますので、毎日、その出力分のデータは消費します。子どもの画像を添付することも多いので無料プランの60MBで抑えるの厳しそうです。
なお、Evernote一強時代後の情報管理については、以下の書籍のシリーズが面白いので、ご興味のある方はぜひご覧ください。