本記事は、アウトライナーを難しくとらえず、日々の暮らしや仕事が便利になり、誰でも気軽に使えるものとして考えたい。文章を書くツールとしてだけではなく、生活や仕事が便利になるアウトライナーの具体的な使い方を提案したい、という趣旨で連載している『暮らしと仕事に役立つアウトライナー「WorkFlowy」の使い方レシピ』の10回目「暮らしに役立つレシピ7 アイデア出し」です。
この連載の一連の内容は次のとおりです。
『暮らしと仕事に役立つ「WorkFlowy」の使い方レシピ』
- 1. はじめに
- 2. WorkFlowyの始め方
- 3. WorkFlowyの基本的な操作方法
- 4. 暮らしと仕事に役立つWorkFlowyのレシピ
- (1) 暮らしに役立つWorkFlowyのレシピ
- (2) 仕事に役立つWorkFlowyのレシピ
この連載の中で使うアウトライナーは「WorkFlowy」です。WorkFlowyの始め方や使い方については、第2回と第3回の記事を参照してください。
この連載後、順次レシピを追加し、全てのレシピを集めた全集のページを開設しました。
1. WorkFlowyを「アイデア出し」のために使うレシピ
アイデアは何もしないで突然頭に降ってくるものでなければ、自然と湧いて出てくるものでもありません。アイデアを生み出すためには、それ相応の「技術」があります。アイデアに関する書籍を開くと、たいていそう書いてあることに気づきます。
アイデアの生み出し方を解説した名著『アイデアのつくり方』は、「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と言い、アイデアを作成する手順を次の5つの工程で整理しています。(※カッコ内は本書の本文ではなく巻末の「解説」からの抜粋を明記)
- 第1段階 資料集め
- 第2段階 資料に手を加える(データの咀嚼)
- 第3段階 孵化段階(データの組み合わせ)
- 第4段階 アイデアの誕生
- 第5段階 アイデアを具体化
一方、アナログツールとデジタルツールを駆使したアイデアの生み出し方を解説した『ハイブリッド発想術 』では、アイデアの作成の過程を3つの工程で整理しています。
どちらも、本質的な部分では同じであり、アイデアは決して自然にふってわいてくるものではなく、生み出すにはそれなりの工程があることがわかります。
本記事では、これらの工程を参考にし、アイデア出しのためのWorkFlowyの使い方を紹介したいと思います。
① アイデアの断片を集める
先の工程で言えば、「資料集め」や「着想」です。
アイデアの断片となる、日頃の気づきや着想、発見、疑問、違和感、などを、特定のテーマを定めることなく、日常的にWorkFlowyにメモしておきます。
WorkFlowyは、パソコンであればEnterキー、スマートフォンであれば改行キーを押せば、簡単に新しいトピックを作ることができますので、深く考えず、頭に浮かんだことをどんどん書き留めましょう。
ただ、後の作業のことを考えると、1つのトピックには1つの内容としておいた方がよいです。
Point1
頭に浮かんだ内容をすぐに書き留めておくことが肝要です。後で書こうと思っても、書く内容はもとより書くこと自体を忘れてしまうことが起こりえます。頭に浮かんだその瞬間に書き留めることがポイントです。スマートフォンであれば、瞬時にWorkFlowyに書き留めることができる「MemoFlowy」がオススメです。
Point2
アイデアの断片を書き留めておく場所は、例えば、アイデアという最上位のトピックを作り、その下位トピックにどんどん書いていく方法と、書く場所は決めず、書いた後に「@アイデア」などのタグをつけて検索できるようにしておく、といった方法があります。
② アイデアの断片を定期的に見返す
先の工程で言えば、「データの咀嚼」や「着想」「連想」です。
書き貯めたアイデアの断片を定期的に見直すようにします。何度も見直していると、例えば、1つの断片から連想して新たな着想を得ることもあるでしょう。そのときは下位トピックにその内容を書き留めておきます。似たような断片があったら並べたり括ったりします。
こうすることで、自然とアイデアの断片に広がりや深さが出てきます。
③ 断片同士を組み合わせ寝かせておく
先の工程で言えば、「孵化段階」や「整想」です。
②のとおり書き貯めたアイデアの断片を定期的に見直すことが大切です。そのとき、断片同士の結びつきや関係性があれば、トピック同士を近づけたり順番を入れ替えたり階層化したりします。断片のトピックをもとに、さらに広がりや深みのある形にします。
その作業をした後、しばらく寝かせておきます。ほっておくのです。
すると、何度か定期的に見直してアイデアの断片が頭に残っているからなのか、ふと新たな着想を得たり、考えつかなかった断片同士の関係性や結びつきに気づくことがあります。しばらく寝かせておくことで、無意識のうちにアイデアの断片が熟成されて、新たな何かが頭に浮かぶことがあるのだと思います。少し抽象的でわかりづらいと思いますので、具体例を後述の「私の使い方」で書きます。
Point3
スマートフォンでトピックの並び替えや移動をするときは、iPhoneであれば「HandyFlowy」をオススメします。公式アプリよりもスムーズにトピックの移動の操作ができます。
④ アイデアを収穫する
先の工程で言えば、「アイデアを具体化」や「整想」です。
寝かせてあるアイデアの断片やその塊を1つのアイデアとして整えます。可能であれば、WorkFlowyである程度文章化しておくと活用がしやすいでしょう。整えたアイデアは、WorkFlowyから切り取り、活用します。
アイデアの形として、まだ切り取るのに不十分な内容でしたら、③の作業を繰り返します。
2. このレシピのオススメPoint
前述したとおりアイデアは「既存の要素の新しい組み合わせ」です。
WorkFlowyは、アイデアの断片をトピックの単位で管理し、そのトピックの並び替え、追記、削除、構造化、折りたたみと展開による表示の切り替えが容易にできますので、アイデアの断片である「既存の要素」(トピック)を動かしながら、その「組み合わせ」を考えるには最適です。
また、前述した「資料集め」もしくは「着想」からの一連の工程の作業がWorkFlowy1つでできます。
「マインドマップ」の方がやりやすいのではないか、という疑問があるかもしれません。
確かに、マインドマップは放射線状に展開していくので、アイデアの断片をふくらませていくのには適したツールだと思います。また、移動させたり、構造化したり、組み合わせる操作もアプリケーションにもよるとは思いますが、マインドマップは割りと容易にできるでしょう。
ただ、マインドマップはキーワードを扱うには適していますが、文章となると少し使い勝手が悪いかもしれません。WorkFlowyの強みはここです。WorkFlowyは、文章を扱うという部分においては、マインドマップより随分扱いやすいと思います。
アイデアをどういう形でアウトプットにつなげるかという問題にもよりますが、最終的に文章という形に結実させるのであれば、WorkFlowyはオススメです。
ただ、WorkFlowyはテキストデータしか扱えませんので、アイデアの断片を収集する段階において、画像などの収集には、他のアプリケーションと組み合わせる方法を考えなければいけません。
3. 私の使い方
基本的な私の使い方は前述したレシピのとおりです。ここでは、日々の何気ないメモであるアイデアの断片が一つのアイデアの形になった具体的な例を書きたいと思います。
本記事は、『暮らしと仕事に役立つアウトライナー「WorkFlowy」の使い方レシピ』という連載の1つの記事です。この連載のテーマが生まれたのは、元をたどれば、何気ないWorkFlowyに書いた断片的なメモでした。では、その断片的なメモが、どのようにこの連載のテーマを生むにいたったのかを紹介します。
(1) 日々の気づきメモを保管する
私は、日頃の気づきや着想、発見、疑問、違和感などを、「気づきメモ」(アイデアの断片メモ)として、ideaというタグをつけてWorkFlowyにメモしています。こういったメモは、外出時に頭に浮かぶことが多いので、iPhoneのMemoFlowyを使って手早くメモしています。
アウトライナーを使い始めたときもいろいろメモしました。というのは、私は、最初、アウトライナーとは文章を書くためのものだと思っていました。ただ、アウトライナーを使っているうちに、アウトライナーは文章を書く以外にも便利な使い方ができるのではないかと思い直します。
そのとき、私は、WorkFlowyのトピックにideaタグをつけて次の3つのメモをしました。
- アウトライナーの使い道は文章の作成だけではない
- アウトライナーの具体的で多様な使い方を提案できないか
- アウトライナーって一般的に知られているのだろうか
(2) 定期的に気づきメモを見返す
私は、週1回、ideaタグをつけたトピックを見返しています。
前述のメモを書いてから、メモを見返すまでの間、WorkFlowyの機能を深めようと、いろいろネットで検索し、WorkFlowyの情報を集めていました。かなりマニアックに深堀りしていたと思います。
そんなとき、週1回の見返しで、先のメモを見たとき新たな着想がありました。
それは、自分がWorkFlowyをマニアックにとらえ始めていたこともあって、その反動としてアウトライナーやWorkFlowyを難しく考えず、気軽に便利に使えるものとして発信してはどうか、というものでした。この考えを元に、次のとおり、先のメモを構造化したり、移動させたり、つけ加えたりをしました。
- アウトライナーって一般的に知られているのだろうか。
- アウトライナーの使い道は文章の作成だけではない
- WorkFlowyは誰でも気軽に使えるツールとしてとらえる
- アウトライナーの使い道は文章の作成だけではない
- アウトライナーの具体的で多様な使い方を提案できないか
- 日々の暮らしや仕事が便利になるWorkFlowyの使い方
(3) 組み合わせて寝かせるを繰り返す
WorkFlowyを使い始めてしばらくすると、これまで使っていたEvernoteとの役割分担が自分の中での課題となりました。そこで、今度は「EvernoteとWorkFlowyとの役割分担」というトピックを加えました。
さらに、Evernoteを使い始めたとき、当時はどうやって使い道を考えたっけという疑問が浮かびました。そこで、WorkFlowyとは少し離れましたが、「Evernoteの使い道をどう学ぶか」というトピックををつけて加えておきました。
結果、アイデアの断片はこんな感じになりました。
- Evernoteの使い道をどう考えるか
- EvernoteとWorkFlowyの役割分担をどう考えるのか
- アウトライナーって一般的に知られているのだろうか。
- アウトライナーの使い道は文章の作成だけではない
- WorkFlowyは誰でも気軽に使えるツールとしてとらえる
- アウトライナーの使い道は文章の作成だけではない
- アウトライナーの具体的で多様な使い方を提案できないか
- 日々の暮らしや仕事が便利になるWorkFlowyの使い方
それから、数日経ったある日、ふと、「レシピ」というキーワードが頭に浮かびました。私はEvernoteを使い始めたとき、Evernoteの使い方をレシピという形で整理された本を読んで、使い方を学んだことがあったのです。そのとき「これだ!」と思いました。
ideaタグをつけたトピックは1週間に1回しか見返しませんので、自ずと寝かせた状態になっています。今思えば、このひらめきがアイデアの断片を寝かせる効果なのか、と、寝かせるという行為に半信半疑だった私は少しだけ意味を感じました。
(4) アイデアを収穫する
前述した「これだ!」と思ったとき、「WorkFlowyのレシピ」というキーワードをトピックに書き込みました。
その後、これが核となり、他のアイデアの断片と組み合わせ、自分のブログの中で「日々の暮らしや仕事を便利にするWorkFlowyのレシピを提案する」という、連載記事のテーマとして1つの形に結実しました。
4. おわりに
前述の「私の使い方」で書いたのは、比較的うまく形になった例です。こんなにスムーズにいくことはそうはありません。でも、アイデアが自然と空から降ってくるのを待つより、レシピで書いた工程をやってみた方が、こういった形で1つの活用できるアイデアが生まれる可能性が高まるということを実感しました。
そして、この工程を踏むには、「WorkFlowy」は最適なツールだと思います。
アイデア出しにWorkFlowyを使ってみませんか?