前回の以下の記事では、情報整理に関する悩みと、それに対する私の対処法の概要を整理しました。
本記事では、その対処法を掘り下げます。
今回取り上げる悩みは「必要なときに必要な情報がすぐに見つからない」です。
1 情報は1箇所ではなく1端末に集約
(1)自分に必要な情報は1箇所に集約
情報整理の話題で、よく耳にするのが「情報は1箇所に集約させた方がよい」という考え方です。
野口悠紀雄さんの「ポケット1つ原則」や奥野宣之さんの著書『情報は1冊のノートにまとめなさい』は有名です。
確かに、自分に必要な情報は、すべて1箇所に集約させておけば、必要になった情報を探すとき、そこだけを探せばいいので効率的です。そこさえ探せば見つかる安心感もあります。しかも、必要な情報を探すときだけでなく、保存するときも保存場所に迷うことがありません。
私も、このメリットを感じ、一時期、自分に必要な情報は、すべてEvernoteに保存していました。データ類だけでなく紙類の情報もです。
文字どおり「自分に必要な情報はすべてEvernoteにある」という状態です。
ただ、この状態は長くは続きません。
私にとって2つの問題が出てきました。
(2)情報を1つのアプリに集約させる場合の問題
1つは、スピードの問題です。
自分に必要な情報をすべてEvernoteに保存し続ければ、当然、膨大なノート数になっていきます。
もともとEvernoteはアプリの動きが速いわけではない上にノート数が膨大になれば、格段と動きが遅くなります。
久しぶりにiPadでEvernoteを起動させたときには、同期がいっこうに終わらず、結局、iPad自体が固まってしまった、ということも一度や二度ではありません。
これでは、保存するだけならまだしも、必要な情報を必要なときにすぐ見返すことはできません。
もう1つはノイズの問題です。
一例をあげます。
例えば、過去の健康診断の結果を見たくなり、Evernoteで「健康診断」というキーワードで検索したとします。
検索結果が一覧で表示され、その中には健康診断の結果だけでなく、「健康診断」というキーワードにヒットしたWebクリップなど様々な種類のデータも含まれます。これらが大量に表示されるとノイズとなり、ここから健康診断の結果のデータを探し出すのは至難の業です。
逆に、例えば、Webクリップの中から健康診断に言及した内容を探そうとして「健康診断」というキーワードで検索すると、過去の健康診断の結果のデータもたくさん表示され、今度はこれらがノイズになります。
お互いがノイズになってしまうのです。
でも、過去の健康診断の結果をどのノートブックに保存したか覚えていないことも当然あります。
さらにEvernoteに詳しい人なら、健康診断の結果であればPDFにして保存しているはずだからPDFファイルに限定して検索すればよいではないか、と思うかもしれません。でも、PDFファイルとは限りません。画像かもしれません。テキストデータの場合もあります。
もちろん健康診断の専用のノートブックやタグを作る方法もありますが、この粒度の情報でノートブックを作るとなると大量のノートブックが必要になり管理しきれなくなります。タグをつけておくのが無難に思えますが、そのうち増え続けたタグが管理できなくなってきます。
このような問題はEvernoteに限った話ではありません。他のノートアプリなどの保存ツールに大量の情報が保存してあれば、当然に起こりうる問題です。
ただ、また別の情報を探そうとしたときにうまく探せないと、再びフォルダやタグの構造を見直したくなる。こんなことを繰り返していては、いくら時間があっても足りません。
と言いながら、私は、よくEvernoteのノートブックとタグの構造を繰り返し見直していました。
しかし、最近は考え方を変えました。
(3)必要な情報は1端末に集約させる
これまで、情報を1つのアプリ、Evernoteに集約させることを重要視していました。しかし、長年使っているうちに1箇所に集約すべきはアプリではなく端末と考えればよいのではないか、と思いたったのです。
どういうことかというと、情報を1箇所に集約させるメリットは、前述のとおり、情報を探すときや保存するときに、その1箇所だけを考えればよい、ということです。
だったら、情報は無理に1つのアプリに集約させるのではなく、常に携帯しているスマホに集約させる、という発想を持ってはどうか。
保存する目的や用途が明らかに異なる情報は、無理に1つのアプリに集約させなくてもiPhoneからアクセスできるのであれば、目的や用途ごとに適切なアプリを使い分ければよい。さらに、クラウド対応しているアプリを使うことで、iPhone以外のあらゆる端末からアクセスできる。
こう考えるようにしたのです。そして、データだけでなく紙類も画像にして保存します。
目的や用途ごとにアプリを分けて保存したことにより「あの情報どのアプリに保存したかな?」と思っても、まずはiPhoneで探せばよい、という安心感があります。どのアプリに保存したかは、案外、見当はつくものです。いや、見当がつくような明らかに種類の異なる情報を分けて保存するのです。
あとは、次回の記事で紹介するアプリ内で情報を探しやすくする工夫をすれば、1つのアプリに集約させるよりは、必要な情報にアクセスしやすくなるのではないかと思っています。
とはいっても、事細かく目的や用途ごとにアプリを分ければよいというものでもありません。あくまで必要最小限の数に絞るのは必要でしょう。
(4)情報を分けて保存するときの懸念
目的や用途ごとにアプリを分けるのは1つ懸念がありました。
アイデアメモの扱いです。
アイデアメモは他の異なる種類のメモと結びつくことで化学反応が起き、新たなアイデアを生むこともある。そう思って、あらゆる情報をEvernoteに保存していたのです。
しかし、冷静に振り返れば、そんなことはほとんどありませんでした。何らかの仕掛けをしない限り、ただ闇雲に保存したEvernoteから新たなアイデアが生まれることはそうそう起きないのです。
(5)実践例
以上の考えから、自分に必要な情報を1つのアプリに集約するという方針は改め、用途や目的ごとにアプリを分けることにしました。Evernoteを10年以上使ってきてたどり着いた実感を伴う判断です。
具体的には、次のとおり、情報の種類を大きく2つに分け、暮らしに関する情報は、情報を見返す頻度によりアプリを分けています。
■知的生産に関する情報
着想メモ、読書メモ、知識メモなどの知的生産(私の場合、ブログやKDP)に関する情報はScrapboxに保存。
https://scrapbox.io/■暮らしに関する情報
備忘録、目標・教訓・反省などのセルフマネジメントに関するメモ、料理のレシピなど、見返す可能性の高い情報は、Apple純正メモに保存。
メモ
Apple無料posted withアプリーチ
それ以外のほとんど見返す可能性がない情報はEvernote。(ただし、日記のみ例外でEvernoteに保存)
Evernote
Evernote無料posted withアプリーチ
以上のとおり、保存先として使っているアプリは、Scrapbox、Apple純正メモ、Evernoteの3つですが、そこに至るまでの情報のフローは、以下の記事で紹介したとおり、アウトライナーのDynalistやDraftsなどを使っています。
2 まとめ
本記事では「必要なときに必要な情報がすぐに見つからない」悩みに対する実践方法の1つとして次の考え方を提案しました。
情報を1箇所に集約させれば、必要な情報を探すときや保存するときに、その1箇所だけを考えればよいので、効率的であり、安心感があるかもしれない。
でも、1つのアプリに自分が必要な情報をすべて集約させるのは、アプリを長く使う上では、アプリの動作スピードや検索時のノイズの問題がある。
よって、情報を保存する目的や用途ごとに、それに適したアプリを使い分け、紙類も含めてクラウド上に保存することで、いつでもどこでも必要な情報にアクセスできるようにするとよいのではないか。
次回は、別の実践方法を紹介します。