「Scrivener」は長文の執筆に便利なアプリです。Mac、iOS、Windows、Androidのアプリがあります。
私は、これまで、KDP(Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング)で以下の2冊を電子書籍で出版しました。
1冊目の執筆のときに使ったエディタは、WorkFlowy でしたが、原稿の下書きを書き終えた後の管理や推敲をもっと楽にしたいと思い、2冊目のときに、WorkFlowyに加え、「Scrivener」を導入しました。
すると、思いのほか執筆から出版までの作業がはかどりましたので、私がKDPで出版したときのScrivenerの使い方と便利に感じた点を紹介します。
1. KDP出版のための私のScrivenerの使い方
原稿の下書きは、すべてWorkFlowy で書きました。
『モブログの極意 〜モブログからモバイル知的生活へ〜』でも書いたように、基本は、ブログと同様、大半の原稿は隙間時間を使ってiPhoneで書きました。
ただ、ある程度完成した原稿がたまってくるとWorkFlowyでは管理がしづらくなります。
よって、章・節・項のうち、項ぐらいの文章の塊が書けたら、Scrivenerに移すようにしました。以後の推敲は、Scrivenerで行います。
要するに、書き書けの文章はWorkFlowy、ある程度完成した文章はScrivener、という使い分けです。
原稿がすべて書けたら、あとは、Scrivenerで何度も推敲し、Scrivenerの「コンパイル」という章・節・項ごとに書いた原稿を連結し予め設定したコードなどを付与して出力する機能により、テキスト形式で出力しました。
それ以降の作業は、1冊目を出版した直後に書いた以下の記事のとおりです。
2. Scrivenerの便利な点
この私の使い方で便利と感じた点を3つあげるとすれば、以下のとおりです。
(1) 原稿の連結表示とKDP出版に必要なコードを付与できる
Scrivenerを使って感じた一番の利点は、「コンパイル」という機能です。
Scrivenerは、ファイルごとに文章を書いても、それを連結して表示させることができます。さらに、例えば、ファイルとファイルの間に「===」を入れたり、ファイル名(タイトル名)には「##」をつけたりする設定ができるため、KDP出版のためのデータを作るには大変便利です。ちなみに、「===」は改ページ、「##」は見出しです。
この機能があるからScrivenerを使っていると言えるほど、便利な機能です。
(2) アウトラインで管理できる
アウトライン、すなわち、例えば、章・節・項など階層で管理できるので、本の執筆には最適です。しかも 、 任意の階層以下は非表示にするなど、階層ごとの表示も可能です。本の全体を俯瞰しながら個々の原稿を推敲したり書いたりすることができます。
当初は、アウトラインで管理する目的で「Dynalist」を使っていたのですが、Scrivenerは文字カウントができたり、言葉では言い表しづらいのですが、Scrivenerにある程度完成した原稿を置くと固定化される感覚があり安心できたり、また、前項の便利なコンパイルという機能があったりと、本の原稿管理という意味ではDynalistよりも使い勝手がよかったのです。特にiPhoneでは、Dynalistよりも使い勝手のよさを感じました。
(3) 進捗をアイコンで管理できる
前項のとおり、ファイル名(タイトル名)がアウトラインで並ぶのですが、そのファイル名にアイコンを付加することができます。多様なアイコンがあるので、例えば、推敲中や完了、あとで追記が必要など、アイコンを使って自分仕様の進捗管理をすることができます。ちなみに、ファイル自体に概要などのメモを入力できる機能がありますが、アイコンであれば、パッと見てわかるので便利です。
他にも、Scrivenerには長文を執筆する上で便利な機能がたくさんあります。
私はあまり使っていませんが、タイトルと概要を表示したファイルをドラッグで動かしながら章立てや流れを考えるのに便利な「コルクボード」という機能(iOS版のうちiPhoneはなし)や、Webクリップや必要な資料などを「リサーチ」というフォルダに保存でき、資料と原稿ファイルを1つのプロジェクトとして一括して管理できたりなど、本を執筆するために必要な機能が揃っています。
正直なところ、Scrivenerは多機能過ぎて、すべてを使いこなせていません。
▼コルクボード
3. Scrivenerの不満な点
Scrivenerには大方満足しているのですが、一番の大きな不満は、同期の遅さとファイル間の競合が起こりやすいことです。
例えば、MacのScrivenerで原稿を書いた後、iPhoneのScrivenerで続きから書こうとしてiPhoneのScrivenerを起動させると、「Dropboxの変更を同期しますか?」と聞かれるのですが、その同期が割に遅いのです。我慢できなくもないのですが、最近のアプリは同期が速いので、それと比較すると不満を感じます。さらに、同期したつもりが競合が起こることが度々ありました。
あとは、メニューの表示の和訳がおかしくて全体的に操作方法がわかりづらいぐらいでしょうか。
ということで、大方、満足しています。
4. おわりに
WorkFlowyで原稿の下書きを書いた後、Scrivenerではなくて「Dynalist」に移してDynalistで推敲などの作業をする方法でもよかったのですが、やはりKDPで出版するときの作業を考えると、Scrivenerのコンパイルは便利です。これだけでもScrivenerを使うメリットはあると感じました。また、iPhoneで推敲したり原稿を管理するにはDynalistよりもScrivenerの方がやりやすいと感じました
Scrivenerの対抗馬として、よく名前があがる「Ulysses」(ユリシーズ)も気になりましたが、Scrivenerは1つのプロジェクトで原稿を管理、一方、Ulyssesはプロジェクトという概念ではなくすべての原稿を管理するという特徴があるようなので、1冊の本を書き上げてKDPで出版するという用途からするとScrivenerの方がよいかと思ってScrivenerにしました。
ちなみに、Scrivenerは買い切りで、Ulyssesはサブスクリプションです。
他にも本ブログではScrivenerの使い方を掲載していますので、ぜひ、本ブログのカテゴリー「Scrivenerのページ」を参照してください。